2008年10月23日

『宮廷画家ゴヤは見た』"Goya's goast"

宮廷画家ゴヤは見た [DVD]
ハビエル・バルデム, ナタリー・ポートマン, ステラン・スカルスガルド, ミロス・フォアマン
B001PRR8C0



ゴヤの時代のスペイン。

嵐の時代、価値観はゆらぎ、人々は翻弄され、風見鶏は回るが、やがてその命運も尽きる。風見鶏たるロレンソ神父(ハビエル・バルデム)の滑稽なまでの生命力と変わり身の早さにおかしみも感じるが、むなしい気分が残る。

無実の罪で拷問をうけ15年も投獄された娘は、その美貌も若さも正気も失う。そんな中で彼女の命をかろうじて支えていたものといえば、彼女が愛と信じざるを得なかった行為と、引き裂かれた娘がどこかで生きているだろうという希望のようなもの、だけだった。

ゴヤは、その二人が、またスペインの市民たちが、王家の人々が、教会の神父たちが、フランス軍が、翻弄され濁流に飲み込まれてゆく姿を、その精緻なペンで、写し取ってゆくのだった。

ゴヤといえば宮廷画家として王家の肖像画を残しただけではなく、暗く、陰惨でグロテスクなテーマでの絵や版画を多く残している。美しく威厳あるべき王の家族の肖像にすら、その表情などに、風刺の精神を発揮せずにはいられなかったらしく、途中、王妃の怒りを買ったりしている。イネス(ナタリー・ポートマン)を哀れに思い助けようとするものの、最後にはただ、少し距離をおいてその後をついてゆくのみ。

美しく着飾って、イギリス軍の娼婦となり、高見の見物でさざれ笑うアリーシア(ナタリー・ポートマン)、なんたる皮肉。

残された赤ちゃんの存在だけが、希望といっていいようなものを、僅かに感じさせる。ただ、生きて、生き延びることだけが、そんな時代にできることだとでも言うかのように。

とにかく重厚。セットで撮影された箇所は無いそうで、本物の宮殿、教会など、すごい「本物」感。衣装も美しい。

ラストシーンの、古い建物に挟まれた石畳の道の、疑似家族と、それを取り囲む町の子供たち、すこし遅れたゴヤの、哀れな行軍が、心に重くのしかかる。
posted by mymble at 18:07| Comment(2) | TrackBack(3) | ☆☆☆☆ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは mymbleさん。レヴューとはこう書きたいもの ! ですね。イネスに、より感情移入された優しい視線・・レヴューで感動させて頂きました。映画の値打ちも上がったようですよ。私はロレンソ神父(バルデム)の毒気に当てられて皮肉な見方しか出来なくて・・。思えば「海を飛ぶ夢」の感動も屁理屈こねているバルデムではなく、家族や友人達の心根からくるものでした。名優なんでしょうけど、性に合わない人って範疇に入りつつあるようです。日曜日に「僕らのミライへ逆回転」行きます(笑)。それではまた !
Posted by kainage_mondo at 2008年10月23日 20:19
kainage_mondoさん、こんにちは。
なんと、過分なお言葉、うれしくも恐縮です(汗 
バルデムの毒気、、、すごくわかる気がします。演技がくどいとかじゃなくて存在がくどい。ある意味凄いかも(笑
決して爽快な後味の映画じゃないですし、きっと好き嫌いは別れる映画でしょうが、ほんと重厚な歴史ものでしたね。
ミライ、楽しめるとよいですね。
Posted by mymble at 2008年10月24日 10:40
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